レイドメンバー
あれはいったい
レイドメンバー
はやくにげようぜ。
レイドメンバー
まてよ、またやられるかも。
レイドメンバー
じゃ、どうすんだよ。
レイドメンバー
ふたりも死んでるのよ。
馬渕勲一
全員動な。全員だ。
馬渕勲一
動けばまた攻撃が来るだ。
水篠旬
みずきさん。みずきさん
馬渕勲一
か。一発だ。
馬渕勲一
水篠くんが気づいてなかったら全員死んでただろ。知ってて叫んだんじゃなかったのか。
水篠旬
い、いえ。ただ、危なそうな気がして。のぶさん。腕が。
馬渕勲一
歯を食いしばればなんとかなる。
馬渕勲一
止血だけ頼めるかな。
馬渕勲一
本当はミズキさんに頼めれば良いのだが、彼女は心が弱い。b級ヒーラーなのに簡単なレイドしか参加できない理由がそれだ。
馬渕勲一
私は2、3度b級を経験したことがあるのだが、あいつはA級、あるいはS級。
馬渕勲一
石板に書かれていた。カルテノン神殿の掟は、1つ目、神をけせよ。2つ目、神を称え、 3つ目、神を信仰せよ。この掟を守れぬものは生きてはかる。
水篠旬
ノブさん、その神っておそらくあいつのことですよね。
ナレーション
今から10数年前、突如として異次元とこちらを結ぶゲートと呼ばれる通路が出現し、 世界中で常識を超える出来事が起こり始め、 ハンターと呼ばれる覚醒者たちの出現がそのいい例である。
ナレーション
ハンターはゲートの向こう側にあるダンジョンに潜むモンスターを倒す役目を担っており、一度ハンターに与えられた力が変化することはない。
ナレーション
そして時としてゲートの向こう側には恐怖を越え、 絶望に限りなく近い究極の怪物が待ち受けていることもある。
クラスメート
あれ見た。あの動画な、
水篠葵
なにやってたの。もうすぐ授業始まるよ。
朝比奈りん
ちょっとな。
朝比奈りん
アオイのお兄さんってハンターだよね。
水篠葵
そうだよ。ハンターって言ってもいい級だからいつも怪我してて大変そうだけど、 この間も包帯だらけでさ。で、なんで急にそんな話。別に
朝比奈りん
私だったらもっとうまくやれるのに。
馬渕勲一
戦うには強すぎる。落ち着いたら逃げ道を探そう。
レイドメンバー
やっとこさ大型ギルドと契約したばっかだってのに、こんなところでくたばるわけにはいかねんだよ。
馬渕勲一
何をしてる。動いてはいけない
レイドメンバー
やられる前にやってやる。
水篠旬
その気になれば俺たちを皆殺しにできるってことか。
馬渕勲一
それも虫を踏み潰すかのように軽々とな。
水篠旬
でも、それならどうして今すぐ殺そうとしないんでしょうか。
水篠旬
殺す力はあるのに殺さない。
水篠旬
すぐ飛びかかってくるそこらのモンスターとは何かが違う。
水篠旬
馬淵さん、1つ目の掟って何でしたっけ。
馬渕勲一
掟。
馬渕勲一
1つ目は確か。神を敬せよ。
水篠旬
このダンジョンにはルールがあります。
馬渕勲一
何をする気だ。
水篠旬
俺の読みが正しければ。
馬渕勲一
おい、やめ。
馬渕勲一
その目、生きることを諦めたのではないようだな。
水篠旬
みんな、あの石像に頭を下げてください。
馬渕勲一
えっ。頭を下げる。
レイドメンバー
馬鹿なこと言ってんだ。
馬渕勲一
何かわかったのか。
水篠旬
はい。どうやらあいつは頭の位置が低いと攻撃してこないんです。
水篠旬
神をけせよ。掟の通りです。
馬渕勲一
確信はあるんだろうな。
水篠旬
はい、一応は。
真島伸晴
これで助かるのか。
真島伸晴
これしきのことで
久我新汰
おっかねぇ顔
水篠旬
表情が
久我新汰
何もしてこ来ないぞ。
馬渕勲一
おい。下手に動くと。
久我新汰
見てくれ。もう攻撃してこない。
真島伸晴
本当にこれで終わりなのか。
レイドメンバー
助かったの。やったぞ。
レイドメンバー
助かった。生きて帰れる。
水篠旬
いや、まだ
久我新汰
終わりじゃなかったんだよ。
馬渕勲一
水篠君。次は何か作戦があるんだろう。
水篠旬
そんなのありませんよ。
水篠旬
ただ、ここでは掟を破ってはいけないんだと思います。
水篠旬
2つ目は神を称えよ、それが鍵です。
真島伸晴
えよたえよって。
レイドメンバー
自分に任せてください。自分はみ、
レイドメンバー
力の研究をしていました。
レイドンバー
神に捧げる賛美の言葉には覚えがあります。
レイドメンバー
神を世に秩序をもた
久我新汰
動きが遅くなったような。
レイドメンバー
真実の道を示したまえ。待って。
レイドメンバー
神に自ら望むままに。あれ。
水篠旬
これは神を讃える言葉じゃない。
レイドメンバー
あなたはやを。神を世に秩序をもたらす支配者を。
久我新汰
くそ逃げろ
馬渕勲一
固まっていると危険だ。ちろう。
水篠旬
はい。
水篠旬
ミズキさん。走って。
久我新汰
こんなところで死ねるかよ。俺を待つ家族がいるんだ。
久我新汰
ここまでくりゃ大丈夫だよな。
真島伸晴
おい久我さん後ろ。
真島伸晴
久我さーん。
水篠旬
神を称えろ。神を称えろ。あいつの何を称えろって言うんだよ。
水篠旬
こんなのただの悪魔じゃないか。
水篠旬
だけど、 ミズキさんを1人にするわけには。
水篠旬
なにか手掛かりは。
水篠旬
やり、斧。ハンマー剣、楽器。
水篠旬
楽器。みんな楽器を持ってるの前に逃げてください。
馬渕勲一
楽器。
馬渕勲一
演奏してるのか。おい、楽器を持った石像は攻撃してこないぞ。
水篠旬
ちしょう。早く音を鳴らしてくれ。早く。
水篠旬
2人だとダメなのか。
水篠旬
みずきさんはそこから動かないで。
観月絵里
水篠さん
水篠旬
あそこだ。
馬渕勲一
そっちじゃない。
観月絵里
水篠さーん
水篠旬
まだ、まだ
水篠旬
まだ
水篠旬
これが称えよの答えか。
観月絵里
水篠さん大丈夫ですか?
水篠旬
はい。なんとか。
観月絵里
水篠さん、
水篠旬
はい。
観月絵里
足が。
水篠旬
もういいです。ミズキさん。もう大丈夫なので。
観月絵里
何言ってるんですか。私が治してみせます。
水篠旬
みずきさん。
真島伸晴
こりゃひでえ。
馬渕勲一
まったくだ。
真島伸晴
腕のことは残念だが、リーダーなのに軽率な判断をしたんだ。因果応報だろ。
レイドメンバー
ひどい。
レイドメンバー
そもそもましまさ、
真島伸晴
みんなで決めたんだろ。
真島伸晴
お前だって賛成したよな。
馬渕勲一
確かに最終的な決定を下したのは私だ。全ての責任は私にある。
水篠旬
言い争ってる場合じゃないのに。掟は。まだもう1つ
真島伸晴
なんだよ。一体
真島伸晴
なんだありゃ。
水篠旬
祭壇神話なんかによく出てくるじゃないですか。神に捧げる宝や池に 3つ目の掟。神を信仰せよ。
真島伸晴
馬鹿な俺ですらここまで来りゃ何のことかわかる。水篠の兄ちゃん、生贄を捧げなきゃなんねえってことだよな。
真島伸晴
出発前まで嫁自慢してた男が真っ2つにされちまったんだ。
真島伸晴
その他にだって大勢。
真島伸晴
さっきの言葉は忘れてねえよな。責任取ってもらうぜ、リーダー。
レイドメンバー
そんなん
久我新汰
にいちゃんは黙ってろ。
馬渕勲一
わかった、自分の足で行かせてくれ。
水篠旬
マブチさんだけが悪いんじゃない。ここに来るのは多数決で決めたじゃないか。
真島伸晴
何が起ころうとしてんだ。
馬渕勲一
水篠くん、ほかに何かしないといけないのかな。
水篠旬
どういう意味なんだ。生贄が必要なんじゃなかったのか。
水篠旬
すみません。
水篠旬
祭壇を調べたいので歩くのを手伝ってくれませんか。
水篠旬
祭壇の近くまでお願いします。
レイドメンバー
でも、それじゃ
水篠旬
多分何も起こりません。
馬渕勲一
何かわかったか。
水篠旬
いえ、まだここで待っていれば誰か助けに来てくれるでしょうか。
馬渕勲一
今日でゲートが開いて1週間経つ。助けが来る前にあいつらが先に動き出すだろう。
水篠旬
ゲートは7日経てば完全解放される。
水篠旬
いわゆるダンジョンブレイクだな。
水篠旬
そうなると モンスターがゲートの外に出てしまう。
水篠旬
それを防ぐために時間内にダンジョンのボスを倒し、ゲートを封鎖するのがレイドのもう1つの目的だ。
水篠旬
今、俺たちが失敗すれば、あれが外の世界に。
水篠葵
こんにちは。
看護師
あら水篠さん。毎日偉いわね。
水篠葵
お母さん。今日も来たよ。
水篠葵
今日、りんが遅刻してきてさ。用事があってとか言ってたけど、絶対寝坊だよ。
水篠葵
あと、このあいだの宣告テスト。
水篠旬
2人もこちらに来てください。そうすると、人数分の炎が灯るはずです。
水篠旬
何かが起こるとすれば、きっとその時でしょう。
馬渕勲一
扉が開いた。
レイドメンバー
出てもいいの。
レイドメンバー
これも罠なんじゃ。
馬渕勲一
今度は何の音だ。
レイドメンバー
石像がこっちに来てる。どうすりゃいいんでしょう。なんで期待してくるんだよ。
水篠旬
みずきさん、目をつぶっちゃダメです。目を離すと動きます。子供の頃やってた遊びと同じ原理です。みんな石像から目を離さないで。
真島伸晴
ずしのフ。どうなっているんだ。少し扉が閉まったけど、あの人助かったぞ。
馬渕勲一
どうして。
水篠旬
青い炎は時間経過と共に消えていく。オレンジの炎は1人脱出した途端に1つ消えた。
水篠旬
1つ目の掟は形勢を。2つ目を称えよう。3つ目は信仰せよ。きっとあれは罠だ。
水篠旬
恐怖と危険、目に見えるの希望。それでも神を信じ続けることを試されているのかもしれない。
水篠旬
これ以上人がいなくなれば死角ができます。
馬渕勲一
ミズノくん。どういうことなんだ。説明してくれ。
水篠旬
石像から目を離さずにこのままいれば大丈夫です。青いものはたい
水篠旬
ないです。全部消えるとき
水篠旬
助かるはずです。
真島伸晴
でも兄ちゃん。炎が全部消えた時、閉じ込められちまう可能性だってあんじゃないのか。
真島伸晴
正直、
真島伸晴
一番弱い兄ちゃんがこんなに活躍するとは思わなかった。俺たちがこうして命拾いできたのは兄ちゃんのおかげだ。
水篠旬
マシマさん。
真島伸晴
俺にだって家族がいる。まだ死にたくねーんだよ。生きて帰りて。俺ももう限界だ。
真島伸晴
すまない。
水篠旬
まだ生き残るんだ。絶対に。今までもそうやって命を繋いできたじゃないか。
馬渕勲一
君たち2人は生きなさい。
馬渕勲一
恐らく1人でもここに残れば扉が閉じ切ることはないだろう。
馬渕勲一
まだ先の長い君たちが助かるべきだ。ミズキさん、水篠くんを頼む。
観月絵里
足に力が入りません。
馬渕勲一
水篠くんの治療に無理をしたようだ。
水篠旬
馬淵さん、ミズキさんと逃げてください。
馬渕勲一
私が残ると言った。
水篠旬
それじゃ誰が月さんを運ぶんですか。時間がありません。早く。
観月絵里
ダメです。水島さん。それなら私が
水篠旬
食事をご馳走する約束でしたよね。これで先に食べててください。ここから出たらお釣りをもらいに行きますから。
観月絵里
この状況でようこそ。
馬渕勲一
すまない。もう本当に時間がなさそうだから
水篠旬
お願いします。
水篠旬
よかった。死ぬのが俺1人で。こんなことならもうちょい手厚い保険に入っとくんだった。
水篠旬
せめて一体くらい道連れにしてやれ。
水篠旬
かかってこい。
水篠旬
俺はいつだって最弱で、何度も何度も馬鹿にされてきた。でも必死にこれまでやってきた。
水篠旬
ふざけるな。ふざけるな。俺だってもっと強くなりたかった。でもなれなかった。
水篠旬
それでも俺は
水篠旬
俺なりに頑張ってここまで生きてきたんだ。
水篠旬
限界だ。
水篠旬
そんなのみんな同じなのに。結局は自分を正当化してるだけじゃないか。
水篠旬
感謝の言葉だって上っ面だ。
水篠旬
得をするのはいつだって自分のことを一番に考えるやつばっかりだ。
水篠旬
だって家族がいる。俺だって生きて帰りた。
水篠旬
死ぬのが俺1人でよかった。
水篠旬
死にたくない。